ハケン切りに始まり社員のリストラが相次いでいるが、それは主に製造現場の話で、景気が悪くなればなるほど営業職は重宝される。
作ったモノは売らなければならないし、売れなければ作りたくても作ることさえもできないからだ。
といっても営業職や販売職などのセールス一般が重宝されるわけではない。
数字を上げるセールスが重宝されるだけで、結果を残せないセールス(彼らは往々にして売れないことを景気や商品などのせいにして、自己弁護の言い訳をしたがる)は重宝されるどころか真っ先にリストラの対象になる。
では、重宝されるセールスになるにはどうすればいいのか。
一番簡単なのはトップセールスマン(ウーマン)と言われる人達のやり方を盗むことだ。
そう、人まねをするのだ。
「学ぶは真似ぶから始めよ」という言葉があるように、昔から人は真似をしながら成長してきた。
もちろん、最初から非常に独創的な考えをする人もいるが、そういう人はごく希で、圧倒的多数の人は師の真似をして自分自身が成長してきたのだ。
日本も戦後、急成長したのはデザインを含め欧米の真似をしてきたからである。
まず真似ること。
組織の側からいえば、真似させることである。
マニュアルも真似させることの一種といえるが、マニュアルではダメ。
マニュアルは平準化、標準化するのには役立つが、それはレベルをミドル化するだけで、むしろハイレベルを下げるマイナス側面の方が大きい。
レベルを上げるにはトップレベルのやり方を真似させる、盗ませる以外にない。
もちろん、最初は猿まねのレベルだろう。
上手に真似ているつもりでも、どこかぎこちなさがあったりして、端からは多少滑稽に見えるかもしれない。
だが、続けているうちに自分のものになっていくものだ。
真似るから学ぶに変わっていくのである。
では、トップセールスマン(ウーマン)といわれる人達はどのようなやり方をしているのか。
例えばBMWを全国1売っているトップセールスマンはTVの取材で「車を売らない」と言っている。
車のセールスマンが車を売らずに何を売るのだと不思議に思うかもしれないが、トヨタ自動車のトップセールスマンも同じようなことを言っていた。
彼らに共通しているのは車というモノを売るのではなく、顧客を大事にすることを第一に心掛けているのである。
トヨタのトップセールスマンは顧客の近くに行けば必ず顔を出しているし、BMWのトップセールスマンは顧客からの電話に実に細かく対応している。
ちょっと擦って傷が付いた、という電話にも、出かけていって、様子を見て、アドバイスをしているのだ。
そんなことは自分でなくても部下とか整備の人間を出向かせればいいように思うが、そうはせず自分で足を運んでいるのだ。
彼らがやっていることは効率主義とは正反対に位置している。
一見、非効率に見える動きをしているんだが、車はどんどん売れるのだ。
車体にちょっと傷が付いたからと聞き、出かけていくのは、それをきっかけに車の買い換えを勧めるわけではないし、そんな話しは一言もしないのだ。
にもかかわらず、車が売れるのはなぜなのか。
既存客に買い換えのサイクルを縮めさせて、新車を販売しているわけではないのだ。
お客さんがお客さんを紹介してくれているのだ。
「あの人から買えば後々安心よ」と。
顧客が自分のファンになり、客を紹介してくれる。自分の代わりにセールスをしてくれているのだ。
「私を買えば、車が付いてくる」
BMWのトップセールスマンはそう断言した。
客は車を買っているのではなく、私という人間(サービス、メンテナンス、安心というようなもの)を買っているのだ、と。
その結果、おまけで車が付いてくるのだ、と。
すごい自信だが、トヨタのトップセールスマンも似たようなことを言っていた。
実は彼らが言っていることは「顧客にサービス、満足を買ってもらっている」ということである。
ある時、顧客から紹介された客の所に行くと、その客は新車ではなくBMWの中古車を欲しがっていた。
中古車は売っても彼自身の成績にはならないのだが、客の要望に合う中古車を駆けずり回って探した。
すると、その客は彼のその態度に感動し、中古車をやめ新車を購入したのだ。
売れない営業マンは車というモノを売ろうとする。
対して、トップセールスマンといわれる人達はモノではなく、サービス、満足、安心という、形では見えないものを売っている。
その違いである。
モノが売れないと嘆く前に、トップセールスマンのこうした極意を盗み、真似ることから始めてみたらどうだろう。
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